心地よい風とシルクのような日差しの
秋口のとある日、五丁川 卓は
福岡市都市高速をバスで福岡市の東区方面に向かっていた。

落ち着いた気温であったせいか、運転席の窓が少し開いていてクーラーの冷気と交じり合っていた。

車両混雑も無くスムーズに運行し、約20分ぐらいで目的地に降り立った。

さすがに朝は逆方向なので多少混雑するだろうと
予測されるが、知人からは朝でも30分くらいと聞かせれていたので、この町が中心地からの
アクセスが不便というのは誤謬だと感じ少し苦笑した。

ちなみにこの町には、西鉄貝塚線の駅があり、
福岡市営地下鉄とも接続されている通勤のピーク時には若干の混雑も見られるが、大体40分程度で天神まで到着する。

途中の千早駅でＪＲに乗り換えて博多駅にも向かうことができる。
ＪＲ和白駅からも博多駅に向かうことも可能だ。

バス停をおりたときに五丁川は頭の中に何かしらの感覚が脳をかすめたが、その感覚はすぐに消えた。


近くのコンビニで”生きて腸まで届くと”印字されたヨーグルトを購入し、ついでに煙を肺にいれた。

五丁川の目に映る景観の中には、大手レンタルショップとカフェが複合した施設や外食産業チェーン店が数店...ラーメン屋などだった。

反対側には大手ハンバーガーチェーンもあり、スーパーやドラッグストア、100円ショップなどかなり住環境的には魅力的な町であったが、その中でも、天ぷら屋には特に興味を引いた。


目的地についたのは、そこから歩いて5分後のことだった。

綺麗に整理されたエントランスを入ると、宅配ボックスが目に入ったが、特に触れる事もなく奥のエレベーターに足を進めた。

幅のある共用部の廊下を歩くと、又、あの感覚が..
“さっきの感覚と違うな”
思わず声にでたが、そのままキーをまわした。

60.84㎡の部屋の先、南東に位置するベランダより眩しいくらいの日差しが、五丁川を照らした。

この物件に来たときにまず思った事は、敷地内が綺麗に清掃されていることだった。

エントランス、駐輪・駐車場にしかり、ごみ置き場まで...
その共用部の清潔さが部屋にさらなる付加価値をもたらしているようだ。

ベランダから外を覗くと、近くの保育園より子供の声が聞こえた...
そのとき五丁川は又、あの感覚に...

感覚なのか記憶...

和白...

駐車場5,400円...

共益費4,000円...

ネット無料...




“そうなのか？”



五丁川はカウンターキッチンの下においた荷物を手に取り、玄関をでた。
もともと帰りは電車でと決めていた。

歩いて3分ほどで、西鉄和白駅についた。

ＪＲの線路と西鉄の線路が交差しているその風景を見たとき、五丁川はあの感覚の意味を完全なものにした。

すでに陽は少し西に傾いていた。

帰りの車中、さっきの物件に“追い炊き機能”がついていたことを思い出したと同時に、なぜか秋の味覚であるサンマの深刻な不漁のニュースも思いだした。

秋の訪れを感じつつ、人知れず苦笑した。




もう、....ことは...無いだろう

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