あれに見えるは…茶畑です。
ここからは秘境を思わせる雄大な自然と里山が一望できます。
仙人が住まう場所かと見違うこの場所は奥八女黒木町にある霊厳寺の座禅岩からの景色と本堂です。
山の中の禅寺はまるで、物語や映画で見る別世界のよう…
山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
そんな漱石の小説「草枕」を思わせるような、風景が一面に広がります。
長すぎる独り言という名の前置きはこれくらいにして、
春爛漫の陽気から、夏の厳しい暑さを思わせる兆しが日差しの強さと共に訪れて参りました。
新茶の時期になり奥八女もゴールデンウィーク中もあって町中は賑わっています。
茶の木たちは冬の寒さを耐え忍び、春の木漏れ日をいっぱいに浴びて珠玉の銘茶へと昇華して、
私たちに季節の歓喜と自然の恩恵を与えてくれます。
さて、仙境への憧憬と夢の旅路はこれくらいにして、もう少し人の世に戻って住みにくさを満喫しましょう
観光に行ったのに、野山と茶畑を撮っただけだと味気ない―そう思い立ち、足を延ばしました。
星野村を越え、上陽町まで向かいました。
いつも博多駅まで売り出しに来られる中島製茶本舗様(nakashimaseicha.com) を訪れて新茶を購入して、
近くのダニエル・イノウエ記念館まで足を運びました。
ダニエル・建・イノウエさんは、お父様が上陽町生まれで、彼がアメリカ合衆国に移住した後、ハワイはホノルルで生まれています。
その後第二次世界大戦で右腕を失い、医者を志していたのですが、断念せざるを得なかったようです。
その為、法学に勉学にいそしみ、政界に進出し、日系人で初めて米上下議員を経験し、上院議長を務め上げました。
その功績を称え、国内外からの寄付で、銅像と記念館が建てられたとのことです。
穏やかな休日の中で、故人の志に薫陶を受けつつ、茶の香りに包まれながら、奥八女に名残惜しい別れを告げ、邁進していくことを誓ったのでした。
福岡の都市圏からは、幾分か遠いですが、是非とも足を運んでみてはどうでしょうか。
私も夏の2番茶の時期にもう一度、訪れてみたい…そんなことを思わせてくれる旅でした。