桃の節句が終わり心持ち暖かい日が訪れて…しかしシトシト春雨で肌寒くどんよりしたような、そんな寒暖差を感じる日々を過ごしています。
肌寒い雨の中をかき分け仕事をこなし、帰路に就く折、「そういえば抹茶をまともに自分で点ててない」と気づき思い立って点ててみました。
抹茶の銘は弥名(みな)の白 鵬雲斎大宗匠(裏千家先代家元)御好の茶です。
自分で点てると感慨深いものがあります。
実は訳あって現在に至るまで、茶道の稽古をお休みさせて頂いており、3年ほどブランクがあります。
単純に茶を飲むという「作業」ではありますが、そこに心血を注ぐことが如何に難しく尊いものを学ばせていただきました。
渾身の思いで、相手を労り、もてなし、それを貫徹するために、自己研鑽に励むこと…その道の険しさと深遠さを痛感するばかりでした。
さて、話が少し逸れますが調べたところによると、鵬雲斎大宗匠は御年100歳になられる方だそうです。
100年もの間茶の湯を通じて生きてきたことだけでも充分すごいのですが、大宗匠は若き頃先の大戦において旧日本軍の特攻隊員だったようです。
終戦まで次々と同年代の仲間が息絶えていく中、悲嘆にくれるしかなかったと述懐なさっています。
そこから、悲しみや侘しさを抱いて茶道の普及に努めてきたとのことです。
「一盌からピースフルネスを」の理念を提唱し、茶の湯を通じて日本文化の精神を世界に広める取り組みに力を注いできたのです。
その並々ならぬ信念に感服するばかりです。
侘びとは知足と枯淡美により構成されるものです。
不十分さや不完全さの中に趣や風流が秘めていると考え、味覚的には—茶の渋み、視覚的には黒や苔むした巌のようにどっしりと身に染みてくるものに譬えられ、内面に宿る自然性(霊性)という面で説明されることが多いです。
私も、茶を通して侘しさを抱き安寧や平穏さを大切にしていきたいと思います。
三寒四温で不安定な日々が続きますが、皆さんの日々に「一盌からピースフルネス」とほっこりする瞬間が訪れることを祈っています。